‘ここから見えないほど 汚れた昨日 言葉にできないことの繰り返しだ’

 04 Limited Sazabysが鳴らす、‘僕だけの’感覚。

 

 

 

 

聞く側が、鳴らす側になる。

 

一見よくあり、シンデレラストーリーにも見えるソレは、現実ではほとんど起こらない。

なぜなら、夢を叶えるためにしなくちゃいけないことが、多すぎるから。

自分の憧れに挑む勇気や覚悟。

加えて、夢の世界が、夢のままであるわけがない、と考える人間が、つまりは足を引っ張ってそうさせまいとする人間が、多く存在しているからだ。 

 

 

でも僕らホントは、きっとどこかにそんなつまらないなにかをぶっ壊してくれる音楽があるって信じているし、あって欲しいと願っている。

その中じゃ空だって飛べるし、分厚い壁や、ましてや汚い大人なんて存在していない。

 

‘CAVE tour2015 ’ 

追加公演、赤坂ブリッツワンマン。

少し遅れて始まったSEのあと、VoGENは「始めようか」と言った。

鳴り出したのは、Enの定番曲。

‘buster call’のイントロ。

 

ざわめきと絶叫が起こった。

 



‘ 君はそんなので満足していいの?

  僕らはもっと高く積みたいんだ

  とにかく全部ぶち壊そうよ ’ buster call

 

 

あの目を見て、思い出した。

僕がかつて持っていた、暖かくて、懐かしいもの。

 

 

‘ 僕はバッタ 僕の生活は危険でいっぱいだ

  猫たちは僕を食べたがる 鳥達も僕を狙っている

  他の虫達でさえ僕を夕食にしたがっている ’ / Grasshopper

 

 

僕の周りにもあふれている。出し抜いて、足を引っかけて、どこかに負い目はないものか。そうやって、人を見る目。他人の不幸を探す目だ。そしていつからか、その目に追い回されるように、僕も同じ視点を持つようになった。だれかを監視して、なにかを見つけて、それを大袈裟にわめく。誰かの、共感や、反応を得るために。

 

僕が知らない世界でも、きっと同じなんだろう。

夢の世界、あこがれの世界であればなおさらだ。

 

たぶんそういう人だって、最初から足を引っ張りたいわけじゃなかったんじゃないか。

きっと、僕らだって青い空を見上げて、風が通り抜けるとき

ふわふわとした希望をずっと信じていたいし、

理由とか裏付けとか、いつの間にか慣れてしまってるその行為は、いったい誰のためなんだろうって、疑問に思う時もある。

なんだかわからない自信は、なんでもできそうだったあの一瞬は、説明のつかない上昇気流は、きっと僕だけのものだったし、誰かに説明することなんて、しなくてよかったんじゃないのかな。

 口に出せば、消えてしまうような、そして実際消えてしまっていた‘自分だけの感覚’は、彼らの曲の中に確かに生きている。

 

身体を包む感覚。これはなんだろう。

 

少年時代。僕が乗っていた六速式の最新兵器。サドルは一番低くして、友達5人で近所の駄菓子屋までよく競争した。

1か2のギアでたくさん漕いで、自分が先頭になったとき。

あのしゅんかん、僕は世界で一番速いと思った。

そしておそらく‘本当に’僕は世界で一番早かった。

隣を追い抜いていく車よりも。たんぼを走り去っていく電車よりも。

 

お祭りで買ってもらった200円のラムネの味や、

仲間しか持ってなかったビックリマンチョコのキラキラしたシール。

4つ駅の離れたプールに1時間以上かけてチャリで行った夏。

 

 

全部宝物になった。

 

 

あのころに比べたら、今の僕は大金持ちだ。

自転車の何倍も速く走れる車に乗ってるし、ラムネやチョコなんて、いくらでも買える。

 

でもいくらスピードを出しても、いくらラムネを飲んでも、

あの速さには追い付けないし、あの味には届かない。

もう、チョコのシールは宝物にはなれない。

 

 

 

 

 

いつかが正しいとか 悔しいとか

涙の協議中

君以外に何を望む / monolith

 

 

8ビートの中にいる彼らははっきり言って子供だ、いや、ガキだ。純粋で何にも怖いものがないころの、自転車をこいでいた時の僕だ。自動車より早いと思い込んでいた、うんこって叫ぶだけで爆笑できた頃の僕だ。懐かしいなと笑いながらも、いつのまにか腕を上げて入り込んでしまっている。彼らの中には、ここで盛り上げようとか、ここで落とそうとかいう、予定調和の流れがない。もっといえば脈絡がない。シナリオがない。右に行きたいから右に曲がる、それ以上の理由なんてないんだ。だからこそ直視できないほどにまっすぐで、だからこそ鋭さがある。

メロディに彼らなりの韻を踏む。語呂がメロディに重なった流れを大切にしている感覚がある。なにより、メロディに芯みたいなものがある。少しくらい揺らしてもぶれなくて、何度聴いて口ずさんでも古くならない。

それはリスナーだった頃の彼らが、好きで好きでたまらなかったもの。一番信じていたものなんじゃないか。 

 

退屈そうな表情 膨らんで喧嘩したり 維持してる

なにがいったいどうしたの?

 

常識 知識 公式 無意識に 嫉妬してる

簡単な日々は どこにもないまま / hello

 

 

僕らはいつの間にか、世間とか社会とかのルールや、常識ってやつに足を絡めとられないように、慎重になって歩いてる。

見渡して、自分は大丈夫だと、転んでる奴を見て安心したりしながら。

 

耐えられなかったのかもしれない。ただ、傍観しているだけの自分が。だめになっていくだけの自分と世界を、あきらめたくなかったのかもしれない。失いたくなかったもの、失うものだとわかっていなかったもの。

そういうものと葛藤して悩んでる。なにがいったいどうしたの。

 

誰かがゴミだと言い捨てるもの。

僕には、大切なものに見えたことがあった。

怒ったり、泣いたりしたことがあった。

見間違いだっただろうか。そんなに昔のことだっただろうか。

そんな宝物の感覚、自分だけの感覚が、こいつらを聞いているとよみがえってくる。

 

僕の、僕らのルールがあったころ、あの頃の僕らが叫んでる気がした。

彼らはそれを、宝物だと呼んだ。

 

赤坂の最後、GENは「また遊ぼうぜ」と言った。

最後まで、あの目をしながら。

 

曲の中では、僕は世界一速いあのチャリの上にいる。

暖かい、この感覚は、僕と、そして僕らだけのものだ。

 

 

monolith

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