自己紹介

少年のやることは全て、正しくないんだと言われ育った。
いつも自信がなかった。
何をやっても怒られたんだ。
怖くてビクビクしていた。


誰かに否定されるのを嫌ったから、無難な選択をするようになった。
顔色を見るのがとてもうまくなったんだ。
家以外で怒られることはなくなったよ。

でも自分はどこにも居なかった。

眠れない夜がいくつあっただろう。
ある日偶然聞いた音楽に少年は息を飲む。

その曲の中にはとんでもない奴がいて
そんな少年に「正しい」と言った。


ほとんど初めての経験だった。


それから、少年はすこしずつ自分の意見に耳を貸すようになる。
周りはみんな違うと否定することも
CDの中の音楽はそれでいいと言った。

初めてケンカをしたときも
お前はひとりじゃないと言った。

口答えするなと怒鳴られた夜も
そばにいると言った。

傘を忘れた雨の日も、イジメられた帰り道にも、フラれた夕焼けの日も、
アイツは「それがどうした」と言う。

たったひとつの味方が出来てから、もう否定されるのだって怖くなかった。
いつもアイツが背中にいたんだ。


男の子は大きくなり、次第に子供の頃の幻想が剥がれてきた。
いつの間にか自転車は自動車になり
ヨーヨーやラジコンは無くしてしまった。

セキニンを押し付け合い、誰かを否定する立場になったことを知る。
日々の喧騒の中、愚痴や倦怠に塗れたあの日の大人がいた。
数字や理屈や肩書きで判断する彼らは、少年を認めてはくれなかった。
「無理だ」と「現実的に考えろ」が口癖のそいつらは、子供の頃の夢を次々と壊した。


彼らにとってたったひとつやっちゃいけなかったことは、そいつらが「戯言だ」と壊そうとするものの中に
少年のヒーローもいたことだ。


あのフレーズを口ずさむ


「それがどうした」

 

Remember our drinking song

 

これから書くことは、そんな僕のヒーローのこと。